いいとか悪いとかは区別してないです
・全体を通して
最近のイベントコミュは5コミュを一人一つメイン回として割り振るか、徹底して5人のうち誰か一人にフォーカスを当てるかのどちらかが多いと思うんだけど、どっちでもなかったな、という感じ。話のメインは奏の単独行動をめぐってのあれやこれやで、個人として描きたかったのは千夜の気持ちの動き、それから比奈の青春のこと……なんだと思う。梨沙と雪美はちょっと薄かったかも?描くべき(おそらくコミュを書いてる人にとってはノルマなんだと思う)ものが多かった中で、この尺で綺麗にまとめたなあと思う。
・作中劇について
作中劇については断片だけ示されるのだけど、明確に中身が決まっていて、そのヒントだけを示して全体像を想像させる、のではなくて、ストーリーに都合のいい部分だけ設定を作って、ストーリーの補完を読者にぶん投げているのではないかなあ。コミュ中に示された断片からは全く物語の筋が読み取れなかった。ストーリーがわからないから、千夜ちゃんの「救いがあっても」とか、奏の「ズルい話」とかいった感想を、「うんうんそうだなあ」じゃなくて「そういう話なんだ」で受け取らなきゃいけなかったのは戸惑った。『あえて描かない』と『描けないから濁す』を履き違えてるきらいがあったりなかったり……。なんかあるかもっと思って掘り返したら、底が出てきた時のがっかり感は異常なのよ。
・千夜の気持ちの移り変わり
千夜ちゃん、初期のお嬢様以外に興味はありません的なオーラはすっかり薄れて、協力的な姿勢を見せるようになってきた。それは困った様子の雪美に気づいて手を差し伸べたり、ダンスの収録現場でマフラーを受け取ったりと雪美との関係で描かれていた。特にマフラーの描写は物理的な暖かさと、雪美の暖かさが描かれていて、まあよくある表現なのかもしれないが上手いなあと思った。登場当初の圧倒的に『閉じて』いたFascinateと個人のメモリアルから、Secret daybreak、Unlock Starbeatを経て、長期スパンで描かれる千夜ちゃんのストーリーなのだろうと思う。計画があってやっていることだと思うので、どれぐらいの時間を掛けてどう着地させてくれるのか追っていくのも面白そう。それはそれとして、デレステというゲームで個人の物語を長期スパンで描写してくれるのはかなり特権じみているので、そこはなんとかしてくれよと思わないでもない。
・奏の行動の意図
奏が4人(正確には、3人)と距離を置いた理由は明快な説明がない。彼女の言葉を引用すれば「今の私に必要なのは、夜の美しさとは逆。陽射しの下に立っても剥がれない、綺麗な嘘。」「カナデという「憧れ」を知るために。誰かの幻想を演じるために。私は……彼女の気持ちを知りたい。」ということらしい。どういう意味だ……。彼女の気持ちとは、素直に解釈して、チヨの憧れであるカナデの気持ち?それとも、カナデに憧れを抱いたチヨの気持ち?まあそういう煙に巻くようなことをするのが速水奏だ、という読み方でいいのかしら。
・雪美
個人については詳しく追っていないのだが、門外漢から見た個人の描写は薄いなあといったところ。サンハイコミュや夢のぞコミュあたりの記憶を引っ張り出すと、彼女のコミュニケーションは「お世話する」「お世話される」だったのが、同僚として並び立つようになってきた印象がある。それにしても、高校生のことについてわからないの、至極当たり前すぎる。なにも遠慮することではない(本人の性格だろうが)。その後の高校生らしいことに連れ回すパートもその後の解決の本質には関係ないし、なんだったんだ?
・梨沙
正直ちょっと損な役回りだったかなあ。個人行動をとる奏に振り回される中で一番考え方や行動原理が揺れ動くことなくはっきりしており、その小学生離れしたリーダーシップで5人を動かし話をまとめる役、という印象。20歳に私たち対等でしょって説教できる12歳はお前だけだ……。ま、イベ連投だし、彼女の強さというか弱さというかはそっちがきちんと仕事してくれることでしょう。
・比奈の過去
過去について情報がほとんど増えなかった。いや全くと言ってもいいかもしれない。彼女が漫画的な青春を過ごしてないのは何度か触れられていて、青き日のメモリーあたりは「じゃあ今から取り戻そう」みたいなアプローチで、彼女のアイドル活動そのものもそういう面があったのだけど、今回「それも私の青春」という方向に舵を切っていて、そこが新しい部分かな、と思ったり。ただまあその考え方は他人に押し付けちゃイカンとも思うので、扱い方に注意して欲しいところ。彼女の過去はどうやらもう永久にわからなさそうで残念だけども、まあ下手に変な設定生やしてわけわからんことになるよりよほどいいか、とも思ったり。
・奏の比奈評、比奈のポジション
奏の「私のわがままも、みんなの気持ちも。のらりくらりとかわして、笑って受け止めてしまう。とってもずるくて、優しい人」というのはすごい本質を突いた評だなあと思った。速水奏、侮れない女……。まあズルいっていうのはたぶん速水奏コーパスなのだろうけど。実際にコミュ内でも奏の提案を肯定し、奏の不在について場を収める役を受け入れ、まあバラしちゃうんだが、それでなお奏の意思を汲んで欲しいとまでやってるので、まーお人好しポイントが高すぎである。なんだかんだで最年長ポジションをまぁそれなりにこなすし、眼鏡アイドルにもなるし、わがままな提案も二つ返事で協力しちゃうのが荒木比奈なのだ。そういう徹底して受け身で、決して他人を否定しない成人ポジション、他に居ないと思うのでどんどん開拓していって欲しい。取り回しの上手さでいうとしゅがはが近いけど、しゅがははどちらかというと積極的だしなあ。